Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

戸田山和久『論文の教室ーーレポートから卒論まで』を読んで

 

NHKブックス 論文の教室 レポートから卒論まで

NHKブックス 論文の教室 レポートから卒論まで

 

 論文を書く前に読むべき一冊。現在は新版も出ていますが、旧版からも多くの学びが得られます。以下に重要と思われる箇所を引用します。

・【鉄則5】論文にはつぎの三つの柱がある。
(1)与えられた問い、あるいは自分で立てた問いに対して、
(2)一つの明確な答えを主張し、
(3)その主張を論理的に裏づけるための事実的・理論的な根拠を示して主張を論証する。
(p.41)

・…論文は第三者によってチェック可能である必要がある…自分がどのような素材(調査、統計、テキスト、先行論文)を使ったのかを 明示し、それがどこで手に入るのか、そのどこを使ったのか、第三者が必要とあればいつでもチェックできるように、こうしたことを論文の 中にきちんと示しておかなくてはならない。論文に、引用の仕方や参考文献の挙げ方など、うるさいしきたりがあるのはこのためだ…(p.46)

・論文とはつぎの五つの構成要素がこの順序通りに並んだものだ。
(0)タイトル・著者名・著者の所属機関
(1)アブストラクト
(2)本体
(3)まとめ
(4)注、引用・参考文献一覧
 (p.76)

・【鉄則17】論文のタイトルには、「この論文を読むと読者は何がわかるようになるのか」を書く。
 …アブストラクトとは、論文の内容を一段落くらいで手短に要約・紹介した「論文概要」のことだ…これは研究者の便宜のために発展した風習だ。論文は 世界中で毎日うじゃうじゃと生産されている…これをいちいち読んでいたらとても身がもたん。 それに最後まで読んで、自分の研究に役立たないことがわかったら泣きたくなる…こういうことを防ぐために、アブストラクトがある。ここだけ読んで、 本文もちゃんと読むべきかどうかを判断すればよい、というわけ。(p.78)

・【アブストラクトに書くべきこと】(かならず入れなければならない項目を★で示す)
★論文の目的(どのような問いに取り組んだのか/何を明らかにしようとしたのか)
★論文の結論(問いに対しどのような答えを出したのか/調査の結果何がわかったか)
★論文の本体でどのように論が展開されるか
・文学作品、芸術作品などについて論じた場合は、扱った素材が何であるか
・何かを調査した場合は調査方法と調査対象(p.78-79)

アブストラクトを書くことには二つの利点がある。まず教員側から言わせてもらえば、この論文では何が問題となっていて、何を素材に使って、おおよそどんな 結論が目指されているのかということが最初にわかると、抜群に読みやすさが違う…書く側にとっても、アブストラクトを書いておくことには意味がある。 自分がこの論文で何を書こうとしているのかは、えてして書いている本人も忘れてしまいがちだ。アブストラクトがあれば、つねにそれを念頭に置いておくことが できる。また、アブストラクトの形で要約できるということは、その論文に、ちゃんと問題提起と解決、そして論証があるということだ。つまり、アブストラクトを 書けるということが論文であることの証拠のようなものだ。だから、自分の書いたものがきちんと論文になっているかどうか、アブストラクトを書くことによって チェックできる。(p.80-81)

・【鉄則18】要約は文章を一様に短くすることではない。読んで報告する報告型の課題に取り組むとき、
(1)筆者はどういう問題を立てているか、
(2)筆者はそれにどう答えているか、
(3)筆者は自分の答えのためにどのような論証をしているか、
の三点だけをおさえて報告すればよい。
(p.83)

・(2-1)問題提起と問題の分析・定式化
(2-2)主張(問題に対する答え、「結論」とも呼ばれる)
(2-3)論証

(2-1)問題提起と問題の分析・定式化
 ここでは最低限、つぎのことをやっておかなくてはならない。先ほどと同様に必須項目は★で示してある。
★問題の提示、つまりどういう問題に取り組むのか
★問題の説明、その問題がどういうものであるのか、もう少し詳しく説明する。問題に含まれる用語や概念を解説することも含まれる。
・問題の背景、どうしてその問題が生じてきたか、その現状分析。いつからその問題があるのか。自分が見つけた問題なら、どうしてそのことが問題だと気づいたのか。
・問題の重要性、その問いに取り組むことにどんな意義があるのか。
・問題の分析、つまり、問題が大きなときはいくつかの問いに分ける。(p.84-85)

・第7章 「パラグラフ・ライティング」という考え方
①簡単なアウトラインをまず作る(箇条書きで、キーワードを並べただけのものでいい)。(項目アウトライン)
②項目アウトラインには、問いと主張があるはず。もっと主張に説得力をもたせるには、さらに何を調べて盛り込んだらいいか、 どんな論証や例を挙げたらいいかを考え、アウトラインを膨らませていく。
③アウトラインの各項目を、短い文の形で表してみる。(文アウトライン)
④その短い文をトピック・センテンスとして、そのトピック・センテンスを補強したり説明したりする材料を付け加えていって、 パラグラフの形にしてみる。(パラグラフ・アウトライン)
⑤ここまでくると、なんだか論文らしきものになっている。そうすると余裕が出てくる。このセンセイのように、もうちょっと 主張に説得力をもたせたいから、この論証も入れようとか、この具体例も使おうと欲が出てくる。それらを盛り込んで、 パラグラフを充実させていく。
⑥そうすると、長くなりすぎるパラグラフが出てくる。そこで、先に見たようにいくつかのパラグラフに分け、そのパラグラフ の相互関係をきちんと明示するようなつなぎの言葉やサブ・センテンス、「第一に」「第二に」とか、「以下では、……を指摘しよう」 などをパラグラフに付け加えていく。
⑦これをやると、また補強しなければならないこと、調べが足りないところが見えてくる。それを調べたり、考えたりして補っていく(「書く燃料サイクル」ね)。
⑧そうすると、あら不思議、いつの間にか論文ができています。(p.195-196)

・…たいていの場合、研究というものは、他人がすでに明らかにしてくれたことがらの莫大な蓄積の上に、ちょこっと、 自分がはじめて明らかにしたことを付け加えることによって進んでいく。 その「ちょこっと」が「オリジナリティ」と呼ばれるものだ。だから、自分のオリジナリティを主張するためには、 自分が他人のどんな業績に依拠しているのかを明らかにしなければならないし、 自分のオリジナルな貢献を可能にしてくれたそれらの業績に対する敬意を示さなくてはならない。論文の中でそれを行なう手段が、参考文献での言及なのである…引用や参考文献のルールに 違反して、他人が考えてくれたことと自分が考えたこととがきちんと区別されないと、それは「パクリ」、つまり剽窃ということになる。というわけで、 このしきたりはきちんと身につけて おかないとおそろしいことになる。(p.232-233)