Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

木下是雄『理科系の作文技術』を読んで

 

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

 

 今回も論文関連本の紹介です。以下に重要と思われる箇所を引用します。

・記述の順序に関しては、二つの面からの要求がある。一つは、文章ぜんたいが論理的な順序にしたがって組み立てられていなければならないということだ。一つの文と次の文とがきちんと連結されていて、その流れをたどっていくと自然に結論に導かれるように書くのが理想である。もう一つは、相手(読者)はまっさきに何を知りたがるか、情報をどういう順序にならべれば読者の期待にそえるか、ということに対する配慮だ。(p.8)

・明快に書くためのその他の心得として、ここでは次の三つをあげておこう。
(a)一文を書くたびに、その表現が一義的に読めるかどうか――ほかの意味にとられる心配はないか――を吟味すること、
(b)ハッキリ言えることはズバリと言い切り、ぼかした表現…を避けること、
(c)できるだけ普通の用語、日常用語を使い、またなるべく短い文章を構成すること。
簡潔な表現は、忙しい現代生活の要求にこたえるためだけに必要なのではない。チャーチルも言っているが…不要なことばは一語でも削ろうと努力するうちに、言いたいことが明確に浮彫りになってくるのである。(p.8-9)

・仕事の文章にはそれぞれの役割があり、機能がある…これらは自明のことかもしれないが、初心の執筆者にとっては、自分の書こうとする文書の役割を確認することが第一の前提である。これは、もし確信がなければ先輩に尋ねて確かめなければならない 大切なことなのだ。多少は書きなれた人も、筆をとる前に、また書き上げたものを読みかえす前に、いったい読者はこの文書に何を期待しているはずかと、一瞬、反省してみることを勧める。私にこういう注意を書かせるのは、何回か研究費申請の審査をさせられたときの経験である。申請書は、
(a)その研究のねらいは何かを具体的に、明確に示し、
(b)自分がこれまでやってきたことと、これからの研究方針とを、専門家が読めばその研究がうまくいく確率を評価できるようにきちんと述べた
ものでなければならない。一言でいえば、その研究の価値と成功の可能性(feasibility)とに対する判断の資料を提供するのが申請書の役割である。(p.14-15)

・学生の答案やレポートは言うにおよばず、調査報告、出張報告、技術報告、研究計画の申請書、等々みなその例だろう。こういうものを書くときには、その類の文書一般の役割を心得ているだけでなく、いま書こうとする文書に与えられた特定の課題を十分に 認識してかかる必要がある。つまり、相手(その文書を書かせようとしている人、および読者。この両者が同一人であることも多い)は何を書かせたいのか、知りたいのかをとことんまで調べ上げ、考えぬくのが先決問題である。(p.16)

・主題の選定、あるいはその主題に関して取り上げるべき材料の取捨にあたっては、読者が誰であり、その読者はどれだけの予備知識をもっているか、またその文書に何を期待し、要求するかを、十分に考慮しなければならない。(p.21)

・こんにち、分厚い学術雑誌を受け取った読者は、まず目次に目を通して表題によって見るべき論文をえらぶだろう。したがって表題は、適確に内容を示す具体的なものでなければならない。次に読者は、目次でみつけだした論文の著者抄録を読み、 それによって本文を読むべきか否かを判断するだろう。抄録誌によって論文を検索する読者が、表題と抄録だけに頼って本論文を見るべきかどうかを判断することはいうまでもない。つまり、自分の論文を読んでもらえるかどうかは多分に表題と著者抄録 とにかかっているのだから、著者がこの二つのなかにエッセンスをつめこもうと努力するのは当然である。(p.32)

・…論文は読者に向けて書くべきもので、著者の思いをみたすために書くものではない。序論は、読者を最短経路で本論に導き入れるようにスーッと書かなければならないのである。(p.87)

・事実の記述だけを取り出して考えれば、必要な注意は次の三つに尽きる。
(a)その事実に関してその文書のなかで書く必要があるのは何々かを十分に吟味せよ。
(b)それを、ぼかした表現に逃げずに、できるだけ明確に書け。
(c)事実を記述する文はできるだけ名詞と動詞で書き、主観に依存する修飾語を混入させるな。(p.107)

・意見の記述では、
(a)意見の内容の核となることばが主観に依存する修飾語である場合には、基本形の頭(私は)と足(と考える、その他)を省くことが許される。
(b)そうでない場合には頭と足を省いてはいけない。
のが原則である。(p.110)

・仕事の文書の文は、短く、短くと心がけて書くべきである。(p.118)

・研究、調査、その他、その文書の内容となる仕事に関して指導者がある場合には、清書が終った原稿(あるいは清書にかかる直前の原稿)をまずその人に見てもらって、意見を聞かなければならない。それとはべつに、原稿をいちど他人に読んでもらって、まちがっているところ、判らないところ、判りにくいところ、そのほか改良を要するところを指摘してもらうことを勧める。傍目八目という ことばがあるが、実際、自分では当然と思って書いたことがひとりよがりであることを思い知らされたり、思いもよらぬ受け取り方をされてギョッとしたり、必ず得るところがある…読んでもらう人がみつからないときには、原稿をしばらく(できるだけ長い期間)寝かせておいてから読み直すといい。忘却が目を新鮮にし、アラがよく見えるようにしてくれる。(p.179)

・校正は原稿どおりに印刷できているかどうかをチェックする作業だから、校正の段階で原稿から逸脱した修正を加えることは、原則として許されない。(p.180)