Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

樋口 裕一『ホンモノの文章力――自分を売り込む技術』を読んで

 

ホンモノの文章力―自分を売り込む技術 (集英社新書)

ホンモノの文章力―自分を売り込む技術 (集英社新書)

 

 文章を書くすべての方におすすめの一冊。以下に重要と思われる箇所を引用します。

・文章はありのままの自分を示すものではない…むしろ、自分をどのように見せたいかを決めて、「見せたい自分」を演出するのが、文章だ。つまりは、化粧のようなものだ。文章を工夫し、知的な自分や真面目な自分や個性的な自分を演出する。そして、自分をアピールする。それが「書く」という行為なのだ…文章を書くのなら、時間をかけて、じっくりと考えられる。そして、文章を練り、いじり、テクニックを磨いて、その上で工夫を重ね、「見せたい自分」を示すことができる。つまり、装い、自己演出することができる。(p.24)

・大学の入試や入社試験で小論文が課される場合…小論文は能力を見るための材料だ。言い換えれば、小論文を書く側からすると、自分の能力の高さを示すのが、この科目なのだ…ある問題について論じるという形で、頭の良さ、知識の多さ、判断力の的確さをアピールするのが小論文という科目なのだ…いつも考えていることを否定し、もっと別の考えはないか、もっと鋭く見せる方法はないかと考えて、アイディアを探す。そして、見つかったら、それを書く。そうすることで、様々な考えを身につけ、自分の考えを明確にしていく。それが小論文というものの意味だ。大学のゼミや会社で書かされるレポートも同じだ。単に物事についての状況を書くだけでは、少しもアピールできない。自分なりの分析を入れ、鋭く背景を示してこそ、上司の評価を得ることができる…しっかりした裏づけをした上で、鋭さをアピールしていれば、高い評価を受けることだろう…「志望理由書」も、一言で言えば、「熱意ある自分」を演出するための文章だ。大学や会社が仲間にしたいと思うような熱意にあふれた人間であることをアピールするわけだ。(p.25-26)

・小論文というのは、作文と違って、ある問題に対してイエスかノーかを答えるものなのだ…レポートや報告書、意見書と呼ばれるものも基本的に違いはない。問題点を見つけ、それについての問題点を指摘し、その上で意見を言うことが求められている。意見というのは、ある事柄が正しいか、好ましいか、どんな対策が可能か、あるいは不可能かといった、イエスかノーを考えるものなのだ。つまり、どんな問題が出されても、イエス・ノーを問う問題提起を自分で作って、それについて論じれば小論文やレポートになる…いずれにしても、一つのまとまりについては一つのイエス・ノーの問題提起をして、それについて判断するわけだ。そうすることで、論点を定められる。一つのことを深く論じることができる。短い字数であれこれ書くと、論点が定まらず、まとまりのない文章になってしまう…何はともあれ、賛否両論のあるイエス・ノーの問題提起を作って、イエス・ノーを判断し、その根拠を述べる。そうすれば、小論文やレポートになるということだ。(p.35-38)

・…論理的に思考するための最大のコツ、それは「型」を決めて、そのとおりに書いていくことなのだ。ただし、「型」というのは、単なる形式ではない。これは、論理的に考えるための道筋なのだ。論理的に問題を取り上げて、それについて判断を下すには、それなりの手順が必要となる。そうした考えの道筋、考えの手順が「型」だ。(p.45-46)

 ・
[I・問題提起]
イエス・ノーの問題提起をする。課題が、直接的にイエスかノーかになっていないときには、ここでイエスかノーかに転換する…
[II・意見提示]
イエスとノーとどちらの立場を取るかを示す。ここは、「確かに……、しかし~」というパターンで書くと書きやすい。…こうすることによって、視野の広さをアピールして、一方的な文章になるのを防ぐ。同時に、問題点をしっかりと理解していることを示し、反対意見を踏まえた上で、論を深める。…レポートなど、制限字数が多いときには、ここをいくつかの段落にして、自分とは反対の立場の意見を紹介しながら、反対意見の根拠を示したのち、それに自分は反対であることを明確に語る。
[III・展開]
イエス・ノーの根拠を示す。小論文やレポートの中心部であって、ここの展開の仕方によって、小論文やレポートの価値が決まる。問題となっている事柄の背景、原因、歴史的経過、結果、背後にある思想、実現するための対策など、表面的ではない部分をできるだけ深く掘り下げて書く。…制限字数が少ないときには、できるだけ焦点を絞るべきだが、レポートなど、制限字数が多いときには、ここをいくつかの段落にして、複数の角度から判断を示す。
[IV・結論]
もう一度全体を整理し、イエスかノーかをはっきり述べる。(p.47-49)

・自己推薦書とは、要するに自分が志望先にふさわしい人間であることをアピールするための文章だ。人柄や個性、熱意をアピールして、自分が大学や企業にふさわしい人間であることを説明しなければならない。大学・企業側は、受験生がどんな人物なのか、どれほどの熱意を持っているかを審査しようとしている。したがって、それに合う人柄や熱意を演出する必要がある…それには、まず大学や企業の求めている人材を知ることだ…大学や企業のパンフレットなどで、自分の志望先の求めている傾向を調べておく必要がある。必ず、そこには、求める人間像が書かれているものだ…「敵」を知り、「敵」の求めに応じて、自分をどう演出するかを考えるわけだ。(p.107-108)

・相手と自分の重なる部分を見つけたら、どれを売り物にするかを決めるべきだ。そして、原則として、それは一つであるべきだ。書く文章の字数が多いときでも、せいぜい二つにするといいだろう。人間にはたくさんの長所がある。が、あれこれ言ったのでは、かえってこれといった特徴がなくなる。すべてに効く薬というのは、どれにも効かないということだ。そもそも、それでは魅力がない。したがって、たくさん書きたいことがあっても、あれこれ挙げるべきではない。できれば一つか、せいぜい二つに絞って、それを詳しく説明する必要がある、そうしてこそ、熱心に説得できる。それ以外のことは、捨ててしまうつもりでいなければならない。どうしても売りものにしたいことをいくつも伝えたかったら、履歴書に書き加えるか面接で口にするかだ。(p.109-110)

・…志望理由書とは、基本的に、志望先でしたいことを書くための文章だ…したがって、志望理由としてもっとも好ましいのは…「したいこと」を明確に示すことだ。それがはっきりしていると、熱意があるとして高い評価が得られることになる。自己推薦書と志望理由書の両方の提出が求められているとき、まず考える必要のあるのは、二つの書類で書く内容をどう振り分けるかだ。自己推薦書でアピールした自分の長所と、志望理由書で書く「したいこと」は連続したものであるほうが好ましい。無関係のことだったり、場合によって矛盾したりすると、説得力を失ってしまう。二つの文書は重なり合いながら、補完しあうように書くといいだろう。つまり、「私の長所は○○だ」と自己推薦書で書き、志望理由書では「その○○を使って、△△をしたい」と書くわけだ。志望理由書の場合も…「したいこと」を一つにまとめるのがコツだ。したいことがいくつもあっては説得力がない…一つか二つに絞って、できるだけ詳しく説明してほしい。一つに絞って書いてこそ、熱意が伝わる。あれこれ書くと、どれも薄まってしまう。それでは、熱意が伝わらない。したいことを定める場合も「敵」を知ることが大事だ。敵を知って売り込むには、まったく異なった二つの方法がある。第一の方法、それは、志望先の自慢にしていることとからめて、「したいこと」を定めることだ…この場合、志望先が自慢に思っていることを明確に指摘する必要がある。志望先の内部の人間は気づいていないが、考えようによっては大きな魅力となるようなことを示せれば、それがもっとも良い…第二の方法、それは、志望先が弱点としているところに目をつけることだ…どの大学も企業も弱点を持っている…弱点をうまく突いて…「したいこと」を定めるわけだ。また、企業の場合は、「そこが弱点なので、そこに自分が入ってがんばりたい」という方向で考える。こうすることで、独自な視点が得られ、説得力が増すことがある。転職志望者の場合、志望企業の弱点を分析し、自分ならどのような対策を取るかを説明し、そのためにどんな活動が必要かを少し匂わせるといい…ただし、転職志望者以外の「新人」の場合は…あくまでも、素人としての謙虚さは示しておく必要がある…いずれにせよ、前もって志望先についてきちんとした情報を手に入れておくほうがよい。大学などの場合は、パンフレットや大学案内などを見る。会社の場合は『会社四季報』…やインターネットのホームページなどを見るといい。特に、ライバル大学・会社と比べてみると、その点が明らかになる。ライバル大学・会社の長所は、多くの場合、志望先の短所というふうに、ほぼ捉えることができるはずだ。このようにして調べた結果を、自分の長所やこれまで学んだことと関連させて考えて、「したいこと」を決めるといい。(p.114-117)

 ・志望理由書も…「型」を用いると書きやすくなる。
[I・「したいこと」をずばりと書く]

[II・志望するようになったきっかけ]

[III・具体的にしたいこと]
大学や会社でしたいことが決まっている場合は、ここで、具体的に内容を書く。…内容をしっかりと見定めていること、知識がきちんとあることを示すのがポイントだ…
[IV・志望大学・会社の良い点]
志望している大学や会社が自分の「したいこと」に合っていること、勉強や仕事に最適の場であって講座や設備が整っていることを説明する。ここで、しっかりと志望校・志望会社について知識を仕入れていることを示す必要がある。そして最後に、学校や会社に入ってからの覚悟を加えるとよい。(p.118-119)

・自己推薦書にせよ、志望理由書にしても、自分が好まれる人材であることをアピールする必要がある。とりわけ、会社の場合、ともに仕事をするのに耐えられる人間であることを示す必要がある。どんなに優れた能力を持っていても、人間性に問題があるようでは、採用してもらえない…また、人間関係を上手に作れることも大事な売り込みの要素だ…したがって、人づきあいの良さもアピールしておく必要がある…もう一つ大事なのは、謙虚さだ。あくまでも新人として大学・企業に入ろうとしているのだから、偉そうな態度を示すべきではない。教えを得て、懸命に頑張ってこそ、一人前になるということを自覚しておく必要があるし、それを示す必要がある。(p.122-124)

 ・自己推薦書や志望理由書は、しばしば面接とセットとなっている。これらの書類を前もって提出しておいて、面接を受けるというのが、もっともふつうのあり方だ…自己推薦書や志望理由書は、ある意味で面接の準備のための書類と考える必要がある。言い換えれば、これらの書類は、面接をうまく運ぶための資料と考えるべきなのだ…面接に「勝つ」には、自分のペースに相手を巻き込むことだ。相手のペースに乗って、質問されたことに一言ずつ答えていたのでは、合格や内定はおぼつかない。自分のペースで話をしたほうが勝つ…これは面接に限らず、人と交渉するときの最大のコツでもある。したがって、自己推薦書や志望理由書には、面接官が質問したくなるようなことをいくつかまいておく必要がある…このような「エサ」を三つくらいばらまいておくと、面接を自分のペースで進めることができるはずだ。(p.125)