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Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

シルヴィア,ポール・J 『できる研究者の論文生産術ーーどうすれば「たくさん」書けるのか』を読んで


できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

 

 論文を執筆する際のポイントを心理学者の観点からわかりやすく説明した一冊。以下に重要と思われる箇所を引用します。

・書く時間は、その都度「見つける」のではなく、あらかじめ「割りふって」おこう。文章を量産する人たちは、スケジュールを立て、きちんと守っている…大事なのは、執筆日数や時間数ではなく、規則性の方だ…執筆時間を規則的に確保して…その時間帯にはきちんと書くこと。最初は週4時間で十分。執筆量がぐっと増えたことを確認したら、そのときに執筆時間を増やせばよい…スケジュールを立てる前にあきらめないというのが、文章を生産的に書くうえでの最大の秘訣だと思う…自分の執筆時間は、断固として死守せねばならない。執筆時間はすでに「割りふり済み」なのである…執筆予定時間には必ず書こう。でも、これは、この時間帯にだけ書くという意味ではない。予定時間終了後にそのまま書き続けたり、書かないはずの日に書いたりするのは大いに結構なこと…習慣という偉大な力さえ見方にできれば、机に向かって文章を書くのは楽になるはずだ…休みにどれだけ書いてもかまわないが、決めた執筆時間は守るべきだ…スケジュールを立て、スケジュールを守る。文章をたくさん書くにはそれしかない。(p.14-19)

・執筆に必要な作業は、作業の種類を問わず、執筆時間中に行うこと…書くというのは、文字を入力するだけではない。書くというプロジェクトを遂行するうえで必要な作業は、すべて執筆作業だと考えてよい…こうしたことも、文章をたくさん書くには執筆時間をあらかじめ確保するしかない理由なのだと思う。プロの執筆作業というのは、たくさんの作業の積み重ねだ…書く時間を「見つける」ことのできない人が、必要な文献をすべて入手し、読む時間を「見つける」ことができるはずはない。予定した執筆時間をこうした作業にも使うこと。(p.20-21)

・まず執筆スケジュールを立てるのは当然として、次に、目標事項のリストをつくって、書き出しておく必要がある。机に向かったら、まずはその日、自分が何をしたいのかについて考えてみること。目標事項に優先順位をつけておけば、いくつもの事項を一度に管理するストレスを避けられる。さらに執筆状況を常時把握していれば、目標達成に集中できるし、1日たりとも無駄にすまいと奮起できる。(p.54)

・執筆のためのサポートグループを運営していくうえでは、次の5項が肝要だと思う。

1.具体的な短期目標を設定し、各メンバーの進み具合を毎回確認する

 …

2.目標は、執筆関連に絞る。他の話を持ち込まない

3.甘いニンジンは、鞭の役目も果たす

執筆サポートグループは、非公式なご褒美を駆使して、よい執筆習慣の定着をはかるべきだろう…社会生活でのちょっとした「ニンジン」が、執筆サポートグループを運営していくうえでの大事な鍵になる。もっとも、メンバーの行動を無条件で支持するのは禁物だ…サポートグループには、目標を守れないメンバーと向き合う用意がないと困る…そのメンバーに執筆スケジュールについて尋ねてみることだ。たいていは、この質問で、その人物がスケジュールを守っていなかったことがわかる。その場合は、もっと現実的なスケジュールを立てさせ、翌週に向けてスケジュールをきっちり遵守させよう。説得に応じて書き始めるまで、このプロセスを毎週繰り返すこと…

4.教員と院生のグループは分ける

 …教員と大学院生とを別のグループに分けることには、それなりの理由がある。執筆の優先順位が違うし…困っている部分も、直面する課題も違う。(p.58-62)

学術的文章の書き手がダメな理由は3つある。1つめ。彼らは、スマート…に見られたがる…2つめ。アカデミズムの書き手は、よい文章の書き方を習ったことがない…3つめ。よい文章を書くための練習時間が圧倒的に不足している…1つめの問題を解決するには、文章を書くときのお手本を変える必要がある…2つめの問題を解決するには…文章の書き方についての本を購入しよう。本書の最後には…役に立つであろう本のリストを載せてある…3つめの問題を解決するには、執筆予定時間を使って、これらの本を読み、提案されていることを実際に練習しよう。(p.66-67)

・…力強く明瞭に書かれた文章は必ず輝いて見える。よい文章というのは一目置かれるものだ。助成金の申請書を審査する人は、明瞭な思考なしに明瞭な文章を書くことなど不可能なことをよくわかっているし、雑誌のエディターは、よい発想がすっきり書かれていることをきちんと評価してくれる…文章を書いたり、手直ししたりする際には、よい文章を執筆するための原則を実践し、不明瞭な表現を使わずに文章を書けるようにしてほしい。(p.94)

・僕の「文章執筆べからず集」では、「アウトラインを作成せずに文章を執筆してはならない」という項目の順位はかなり高い…アウトライン(構成・概略)の作成は、執筆作業そのものであって、「執筆本番」のための前奏曲ではない。スランプに陥って執筆できないという愚痴が出てくるのは、アウトラインを作成していないからだ…たくさん書く人は、アウトラインもたくさん書いている…アウトラインを作成すると、論文の中身について、いろいろなことを前もって判断できる…執筆時には、「心の中の想定読者」と相談しながら、いろいろなことを判断するのがよい…ちなみに、想定読者のメインは、自分の分野の自分以外の専門家、つまり、研究上の関心事項が自分と共通していたり、論文で扱う事項についてもっと知りたいと思っていたりする教員や院生ということになる。論文は、こうした想定読者に向かって書くこと。(p.97-99)

・読者というのは、せっかく論文を見つけても、タイトルとアブストラクトしか読まないものだ。だから、よいタイトルをつけ、すばらしいアブストラクトを書こう…デジタル時代なのだから、読者が論文を見つけるのは、タイトルとアブストラクトが蓄積された電子データベース経由ということになる。アブストラクトには、論文検索に使ってもらえそうな検索用キーワードをすべて入れておく。(p.100-101)

・序論を読むと、大事な研究か、どうでもよい研究かがわかってしまう。論文のうち…普通に読んでもらえる確率がもっとも高いのが、この序論の部分だろう…

・序論は、論文全体の概観…からはじめる。この部分は1段落か2段落にとどめる。この概観部分では、研究のきっかけになった一般的な問題、疑問、理論について書く。研究を行うことの正当性を示し、読者の興味を喚起し、論文の枠組みを提示することで読者が論文を読み進めやすいようにするのがこの部分の目的だ。

・概観部分を書き終えたら、第2部分を紹介する見出しを書く…この第2部分が、序論の本体部分となる。つまり、ここで、関連した理論について説明し、過去の研究のレビューを行い、研究のきっかけとなった疑問についてより詳細に論じる。見出しや小見出しを道しるべとして使うこと…第2部分では、概観部分で説明した問題から脱線しないようにしよう。

・…第3部分では、実験について記載し、その実験がこうした疑問にどのように答えてくれるのかについて説明すること…

この雛形では、論文で扱う問題に読者をいざない…この問題に関連して理論や研究のレビューを行い…当該研究がいかにしてその問題を解決するのかを明瞭に述べる…その結果、読者は、明瞭な道筋に沿って読み進むことができるし、執筆者も脇道に迷い込まずにすむ。

(p.101-103)

・参考文献のセクションでは、論文で展開した発想の数々に影響を及ぼした文献・資料などを挙げる。研究が科学という現場に位置づけられている以上、参考文献からは、論文執筆者が自分の研究について何をどう考えているかが透けて見える。掲載する参考文献は慎重に選択すること。ゆめゆめ、論文の内容に関連して読んだ文献をすべて挙げたりしないこと。未読の書籍や論文に言及することも禁物だ…書き慣れた執筆者は、参考文献を利用して、自分の望む査読者にあたる確率を高めるという。誰に査読を頼めそうかを考えるエディターが、参考文献のセクションを開いて、誰の文献が引用されているかを見ることも多いからだ…なお、自分の最新論文には、自分自身の過去の論文も文献として引用しておくこと…自分の過去の研究を引用すれば、自分の最新の論文が、これまで積み重ねてきた仕事とつながる。もし、誰かが自分の仕事に関心を持ち、最新の論文を読んでくれたとすれば、その人が、他の論文も読みたいと考えてくれる可能性は高い。自分の文献が引用してあれば、その読者は過去の文献に容易にたどりつける。(p.110-111)

・再投稿時にも、カバーレターが必要となる…修正個所と非修正個所を正確に示す詳細なレターがあれば、エディターは、修正原稿をアクセプトしやすくなる。再投稿時のレターは、詳細で、きちんとした構成のものとする必要がある。修正個所について率直かつ網羅的に説明すること。論文をたくさん発表している人は...変更点のメリットを説得力のあるかたちで説明し、フィードバックされた内容をきちんと取り入れるまじめな研究者であることをエディターに対してきちんとアピールしてくる…

 ・再投稿のレターでは、まず、エディターに対し、コメントや、修正個所を投稿するチャンスをもらったことについて、謝意を表すること…

 ・修正個所は、いくつかのセクションに分け、各セクションに見出しをつける…見出しごとに、査読者に指摘された内容を、番号をつけて十分に説明する。番号をつけて箇条書きにすることでレターを簡素化できるし、すでに説明した内容にも簡単に言及できる…

 ・それぞれの修正個所については、3部構成で説明しよう。まず、コメントや批判点を要約し、次に、そのコメントに対して自分がどう対処したかを説明するが、その際には、できるだけ原稿のページ数を具体的に記載する。最後に、その対処によって、コメントの内容がどう解決されたのかを書く。

 ・エディターは、査読時に提案されたすべての指示に従うことを期待しているわけではない。でも、従わなかった理由の説明は期待している…コメントに従わない場合は、コメントに従わなかった理由を丁寧に説明すること。

 ・専門家としての矜持は大切。へらへらと媚びないこと。(p.116-119)

・…論文というものは、そもそもリジェクトされるものだし、リジェクトされるという前提に立って書かれるべきものでもある…論文をたくさん書いている研究者は、たくさんリジェクトされている…リジェクトというのは、えてして、不公平で、悪意があって、説明が足りなかったりするものだ…しかし、エディターに文句を言うのは我慢しよう…時間を使うなら、論文の修正に使おう…査読からは生かせる部分を生かそう。論文を修正したら、別の雑誌に投稿すればよい。たくさん書くためには、リジェクトと刊行についてのイメージを変えるべきだろう。リジェクトというのは、刊行に際しての消費税のようなものだ。刊行論文数が増えれば、リジェクトの数もその分だけ増える。(p.120-123)

・スケジュールを立て、机に向かおう。望みは控えめに、こなす量は多めに。(p.155)