Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

菊地俊郎『院生・ポスドクのための研究人生サバイバルガイド――「博士余り」時代を生き抜く処方箋』を読んで

 

 研究者をめざす方の必読書です。以下に重要と思われる箇所を引用します。

・...若手研究者はただ自分の興味のままに研究すればよいというものではありません。興味を大切にしつつも、自分の研究がどのように社会に貢献するかをつねに考える必要があります…それには、国の科学技術政策を知っておくことが大事です。世の中が研究者に何を求めているかを知るためであり、さらに言えば、あなたの研究を支える科学研究費を出すのが国だからです。大学等の基礎研究が、国民の税金で行なわれている以上、その研究課題の成果が社会に何らかの形で還元されるべきことは、誰も異論のないことと思います。(p.61)

・これからの研究者は、このように社会が研究者にどのようなことを期待しているかを考え、自分の研究テーマとの関連を意識しておく必要があります。(p.64)

・研究者に必要な資質として、第一に独創性を持っていることが挙げられます。では独創性とは何かというと、「自分ひとりの考えで、新しいものを創りはじめること」です。強調したいのは、この 「創りはじめること」です。実際に実行に移し、試行錯誤し、簡単に諦めないことを意味します。(p.75)

・私は、研究者としてのもうひとつの資質は、「気づく力」をどれだけ発揮できるかにかかっていると思っています。研究している途中で気づいたことを大切にして、新たな発想や考察を加え、「独創性のある研究」 にまで育てることが、科学技術イノベーションにつながると思います。(p.77)

・他方、大学の経営に携わる人たち...は、競争的研究資金を獲得できる人材をいつも探しています。財政難の大学・研究所にとって、研究費を自前で調達して研究を推進できる研究者が多いほど 助かるからです…そういう意味でも、競争的研究資金を獲得した実績のある研究者は有利と言えます。(p.103)

・国が実施している競争的研究資金については、文部科学省のホームページから「科学技術・学術」のページに飛んで、「研究費、研究開発評価」から競争的資金の概要を見ることができます。(p.103-104)

・現在、政府の競争的研究資金については、公募情報から申請まで「e-Rad」と呼ばれる府省共通研究開発管理システムを用いて、オンラインで行うことになっています。公的競争資金による助成事業 があるので、e-Radのホームページの「現在募集中の事業一覧」を時折見て、あなたの課題や技術に関連する募集がないかを確認しておくことが必要です。ところで、適当な募集を見つけても、気がついた ときには締め切り日が間近に迫っていて、応募の資料作成の準備に十分な時間をとることができないことが往々にしてあります。そこで、「受付終了済みの事業一覧」で前年度に適当な事業がなかったか 前もってチェックしておきます。もしあれば、次回も同じ時期に募集が行われることが多いので、数ヶ月前から余裕を持って準備を始めることができます。また、前年度の事業一覧では、事業ごとの応募数、 採択数、採択率、審査員、採択者氏名、所属、採択課題、内容の傾向など多くの情報が含まれているので参考にしてください。(p.110-111)

・研究者のサバイバルは、まさにこの競争的研究資金の獲得ができるかどうかにあります。そこで、政府機関の公募だけでなく、民間助成団体からの助成金奨学金も活用して、自分の研究費を集めることも視野に 入れましょう。民間助成団体からの助成金は、政府機関と比べ額は少ない場合が多いのですが、その使用用途に比較的自由度があることが多いので、使いやすいと言われています。(p.113-114)

・書類選考は、アドバイザーと呼ばれる審査員(提案が多い場合などは、それ以外にも外部評価者の協力を依頼することもあります)が手分けをして行います。豊富な知識と深い専門知識を持つ審査員でも、 研究対象が非常に広がっている最先端の研究分野すべてに詳しいわけではありません。そんな場合、少し専門から外れている人が読んでもわかりやすい提案書は、当然、採択候補リストに上がってきやすくなります。 研究者は皆たいてい、自分の研究がもっとも興味深いテーマで、そのアイデアも独創性に富んでおり、採択されるのが当然であると思い込んでいます。そうした姿勢が、専門用語の説明不足や略語の多用を招き、 「当然知っているだろう」調の文章になって表われてしまいます。熱い思いを込めることに変わりはありませんが、謙虚に、客観的なスタンスで書く必要があります。(p.129)

・フォントは明朝体かゴシック体で、サイズは通常10.5ポイントか11ポイントが適当です。字数の制限(「400字程度で記載ください」など)やページ制限(「5ページまで」など)がある場合もあるので 注意してください。強調したい場合は、フォントを大きくしたり、太字にしたり、下線を引いたりします。多用すると読みづらくなるので注意してください。網掛けは見にくくなる原因なので避けたほうが よいでしょう。同様に、文章中の赤字や青字の多用もかえって読みづらくします。また、文字だけがぎっしり詰まったページも読みづらく、審査員であっても身構えてしまいます。パンフレットのように 派手にならぬよう、文章は黒で、箇条書きなどを入れて読みやすくし、またページ内に適当に余白を作ったり、写真や図表はカラーで入れたりするのが効果的だと思います。全体のレイアウトをみて柔軟に 考えてください…提案書はモノクロコピーされて審査員に配られる場合もあります。その場合、カラー部分のコントラストが十分ではなく不鮮明でわかりづらくなることがあります。応募前に一度自分で モノクロでプリントアウトして、コントラストを確認してください。図表は、文章の説明を補完する簡素なものとし、1ページに1つか2つ程度にし、バランスを取った構成が必要です…審査員の中には、研究者の 職業病とも言えますが、論文の多読で眼を酷使して視力が衰えている人もいます。小さな文字、とくに図表の中の文字は読みづらいという話はよく聞きます。一度、プリントアウトして確認しておくとよいでしょう。(p.130-131)

・…約1200団体の助成情報データベースがある公益財団法人助成財団センターのサイトが参考になるでしょう。トップ画面から、「民間助成金ガイド」→「採択課題データベース」→「助成対象テーマ(課題名)」と進み、 キーワードを入力して検索を実行すると、該当する助成の一覧を見ることができます。さらに、「財団名」をクリックすると、それぞれの財団の概要を見ることもできます。このほか、科学技術振興機構の 「産学官の道しるべ」というサイトにある産学官連携データベースでも、民間助成を検索することができます。じっくり印刷物で調べてみたい場合は、『助成団体要覧』(編集・発行 助成財団センター)が 年度ごとに刊行されているので利用するといいでしょう。(p.140-141)

・応募方法の基本は、公的競争的研究資金の場合と同じですが、民間財団の助成に応募する際にとくに気をつけたいポイント、民間助成ならではの特徴を挙げておきます。
①助成財団の趣旨に沿った内容であること
それぞれの助成財団の設立目的や活動内容を読んで、研究助成の仕組み、留学や海外学会への参加旅費提供の有無などを調べ、どの助成財団があなたの提案に合っているかを調べます。
②他の助成金と競合しない特徴があること
…提案書の概要を記載する際、その財団の特徴を織り込み、他ではできないことを強調するとよいでしょう。
③研究費の使用に自由度がある
…民間助成の場合は自由度があり、幅広い用途にも使用できる場合があります。それぞれの財団によって異なりますので個別に確認してください。
④助成財団によっては、申請に制限がある
助成財団の目的から指定大学があったり、学会、協会などの推薦が必要とされたりする場合があります。不明な点があれば財団に問い合わせる、採択経験者に相談するなどしてください。
⑤一度採択された研究者は、再採択されない
助成財団の趣旨として、公平性、平等性を重視しますので、多くの場合は一度助成した研究者を再び採択することはありません。
⑥比較的研究費の規模が小さい

⑦企業とのネットワークの道が開ける

⑧審査員
財団職員、大学教授、企業経営者など10名程度で構成され、大学教授、名誉教授などの学識経験者が取りまとめ役をする場合が多く、その中心人物に関心のあるテーマが有効かもしれません。財団は、やはり社会貢献の視点を重視しているため、新聞や雑誌、マスコミに取り上げられる機会の多いテーマ、環境問題、教育問題、雇用促進、老齢化問題、文化的研究が有効と言われています。 スポンサーが地場産業の場合は、地域性に関するものもいいでしょう。公的助成とは違って、専門外の審査員が多くなるので、動画やサンプルの提示などわかりやすい説明を心掛けることが大切です。 また民間助成の場合、説明会場には審査員や審査に関わるスタッフが同席している場合がわりと多いのです。説明会に参加して質問をするのも効果的です。顔と名前を覚えてもらい、積極的で良い印象 を持ってもらえることがあります。(p.141-145)