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Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

阿部彩『子どもの貧困――日本の不公平を考える』を読んで

 

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

 

 貧困問題に関心をお持ちの方におすすめの一冊。以下に重要と思われる箇所を引用します。

子ども期の貧困は、子どもが成長した後にも継続して影響を及ぼしている。(p.24)

親の収入は、多かれ少なかれ、子どもの成長に影響する…(p.33)

・本書の主張は以下の二点である。第一に、子どもの基本的な成長にかかわる医療、基本的衣食住、少なくとも義務教育、そしてほぼ普遍的になった高校教育(生活)へのアクセスを、すべての子どもが享受するべきである…第二に、たとえ「完全な平等」を達成することが不可能だとしても、それを「いたしかたがない」と許容するのではなく、少しでも、そうでなくなる方向に向かうように努力するのが社会の姿勢として必要…子どもの貧困に対処することは、その子自身の短期・長期の便益になるだけではなく、社会全体の大きな便益となるのである。(p.36-38)

・日本には、政府による公式な貧困基準(貧困線)が存在しない…日本政府は貧困基準そのものさえ設定していないので、公式な統計による貧困率も計算されていない。(p.40)

OECD欧州連合(EU)などの国際機関で先進諸国の貧困を議論するときに使われる貧困基準も、「相対的貧困」という概念を用いて設定されている。相対的貧困とは、人々がある社会の中で生活するためには、その社会の「通常」の生活レベルから一定距離以内の生活レベルが必要であるという考え方に基づく。つまり、人として社会に認められる最低限の生活水準は、その社会における「通常」から、それほど離れていないことが必要であり、それ以下の生活を「貧困」と定義しているのである…これに対する概念が、「絶対的貧困」である。絶対的貧困とは、人々が生活するために必要なものは、食料や医療など、その社会の生活レベルに関係なく決められるものであり、それが欠けている状態を示す。(p.42-43)

・実際に、相対的貧困率はどのように計算されるのであろうか。OECDで用いられるのは、手取りの世帯所得(収入から税や社会保険料を差し引き、年金やそのほかの社会保障給付を加えた額)を世帯人数で調整し、その中央値…の五〇%のラインを貧困基準とする方法である。(p.44)

・…日本は子どもの相対的貧困が他の先進国と比較してもかなり大きいほうに位置している…(p.54)

・どの年齢期の子どもが貧困であるのかを知ることは政策議論においても重要である。多くの制度が、対象とする子どもの年齢制限を設けているからである。(p.58)

・…日本の子どもの貧困率が決して国際的に低いレベルではなく、そして中でも、母子世帯の子ども、〇歳から二歳の乳幼児、若い父親をもつ子ども、多子世帯の子どもの貧困率が非常に高い。憂慮しなければならないのは、これらの世帯における貧困率が、日本の中でもっとも早いペースで上昇していることである。(p.70)

・日本における子どものいる世帯に対する給付の代表的なものは児童手当である…「薄く広い」手当となっていったのである(p.81-84)

・…児童手当と対照的なのが児童扶養手当である。児童扶養手当とは、父と生計を同じにしていない一八歳未満の児童に対する給付であり、日本の母子世帯に対する政策の中心的な制度である…さまざまな「少子化対策」が拡充される中、母子世帯に対する政策は、むしろ縮小傾向にある。(p.85-86)

生活保護制度は、当然のことながら、子どもがいる世帯もその対象とする。しかしながら、生活保護制度の運用は非常に厳しく、貯蓄や財産はひと月の生活費の半分以下、頼れる親や親戚もいない、稼働能力(働く能力)もない、と判断されない限り、ほとんど保護の対象とならない。特に最後の稼働能力の要件は、子どもをかかえる勤労世代の世帯には厳しいものとなっている…そのため、子どもの保護率…は非常に低く…子どもの貧困に関して、生活保護制度は限定的な役割しか果たしていない...実際にその恩恵を受けているのはごく一部の世帯だけなのである。(p.90-92)

・…日本の母子世帯の状況は、国際的にみても非常に特異である…「母親の就労率が非常に高いのにもかかわらず、経済状況が厳しく、政府や子どもの父親からの援助も少ない」…(p.109)

保育所、公立小・中学校において貧困対策が行われてこそ、高等教育の無償化の効果が充分に発揮されるのである。(p.177)

1 すべての政党が子どもの貧困撲滅を政策目標として掲げること

2 すべての政策に貧困の観点を盛りこむこと

現役世代の中でも、子どもを育てていたり、貧困線を下回る生活をしている世帯に対しては、せめて、負担が給付を上回ることがないように、税制、公的年金、公的医療保険介護保険生活保護を含めたすべての社会保障制度で考慮すべきである…

3 児童手当や児童税額控除の額の見直し

4 大人に対する所得保障

5 税額控除や各種の手当の改革

6 教育の必需品への完全なアクセスがあること

7 すべての子どもが平等の支援を受けられること

政策の対象を、「世帯」から「子ども」に移し、子どものある世帯に対する政策を一本化した「子ども対策」を打ち出し、すべての子どものウェル・ビーイングを向上するという理念…

8 「より多くの就労」ではなく、「よりよい就労」を

9 無料かつ良質の普遍的な保育を提供すること

10 不当に重い税金・保険料を軽減すること

11 財源を社会全体が担うこと

(p.220-233)

・本書が提唱したいのは、「子どもの幸せ(ウェル・ビーイング)のための政策」である。子どもの数を増やすだけではなく、幸せな子どもの数を増やすことを目標とする政策…(p.243)

・本書で述べてきた内容のなかでも、特に強調したいのが、すべての子どもが享受すべき最低限の生活と教育を社会が保障するべきである…(p.244)