Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』を読んで

 

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

 

貧困、格差問題に関心をお持ちの方におすすめです。以下印象に残った箇所を引用します。

・…「サブプライムローン問題」は単なる金融の話ではなく、過激な市場原理が経済的「弱者」を食いものにした「貧困ビジネス」の一つだ。(p.6)

・…浮かび上がってくるのは、国境、人種、宗教、性別、年齢などあらゆるカテゴリーを超えて世界を二極化している格差構造と、それをむしろ糧として回り続けるマーケットの存在、私たちが今まで持っていた、国家単位の世界観を根底からひっくり返さなければ、いつのまにか一方的に呑み込まれていきかねない程の恐ろしい暴走型市場原理システムだ。そこでは「弱者」が食いものにされ、人間らしく生きるための生存権を奪われた挙げ句、使い捨てされていく。(p.9)

・「貧困地域ほど無料-割引給食に登録する生徒の数は多くなります。裕福な地域の子どもたちは親が低カロリーで栄養価の高い手作りのランチを持たせる余裕がありますから。ですが子どもに朝食も食べさせられない貧しい地域の親たちにとって、給食プログラムは命綱です。たとえメニューがコスト削減のためのジャンクフードばかりだとしても、空腹のまま授業を受けさせるよりはましだと親たちは考えるんです」(p.20)

・貧困の受給者たちの多くは栄養に関する知識も持ち合わせておらず、とにかく生きのびるためにカロリーの高いものをフードスタンプを使って買えるだけ買う…これらのインスタント食品には人工甘味料や防腐剤がたっぷり使われており、栄養価はほとんどない。その結果、貧困地域を中心に、過度に栄養が不足した肥満児、肥満成人が増えていく。健康状態の悪化は、必要以上の医療費急騰や学力低下につながり、さらに貧困が進むという悪循環を生み出していく。(p.26-27)

・仕事をいくつかかけもちしても…移民にはチャンスなど決してない…「でもアメリカ人になりさえすれば、道は開けるんです」(p.59)

・八〇年代以降、新自由主義の流れが主流になるにつれて、アメリカの公的医療も徐々に縮小されていった。公的医療がふくらむほど、大企業の負担する保険料が増えるからだ。そのため政府は「自己責任」という言葉の下に国民の自己負担率を拡大させ、「自由診療」という保険外診療を増やしていった。(p.64)

・民間の医療保険に加入してもカバーされる範囲はかなり限定的で、一旦医者にかかると借金漬けになる例が非常に多い。(p.67)

・入院日数の短縮も患者を苦しめている…実際の費用にかかる分を低く抑えるために、保険会社が病院や医師に病名や手術ごとの治療における「標準」を示しているからだ。

・「診療実績の悪い病院や、請求者の多い病院は保険会社の登録リストから外されて、加入者が受診に来なくなりますから、医療側は保険会社を邪険にできないという弱みがあるのです」(p.74)

・「…ある期間内に改善できなければ、保険会社は今度は契約医認定の取り消しを通告してきますので、被保険者である患者さんがその医師の診察を受けられなくなってしまうんです…」(p.77)

・高齢者のための公的医療保険である「メディケア」は…社会保障税を一〇年以上支払うと六五歳で受給資格を得ることができる仕組みだ。受給者は毎年一〇〇ドル支払うと、医療費の二〇%を自己負担するだけでよくなり、六〇日までの入院は一律八〇〇ドルを収めればよいことになっている。しかし、州や病気の種類により二〇%という自己負担額は変動し、また病院側の対応によっても「メディケア」のサポート額は変わってくる…アメリカの公的医療保険制度にはこの政府負担の「メディケア」(高齢者医療保険制度)と政府と州が半分ずつ負担する「メディケイド」(低所得者医療扶助)の二種類があるが、どちらも高すぎる医療費と保険会社が支配するアメリカ医療システムの中で連邦政府と州政府の両予算を圧迫し、非常に問題になっている…この制度のもう一つの問題として、医師や病院側がこの「メディケア」患者を受け入れないことがある。理由は医療費が制限されていること、そして病院側が診療後メディケアにその医療費を請求しても、審査により請求金額が認められないケースが多いことなどだ。(p.78-80)

・DRG定額支払い制度では医療サービスの量を減らすほど病院側の収入は増えることになる。「病院側のコストを減らすもっとも効果的な方法は、患者の入院期間を短縮することでした」…「患者の入院期間が長引くと病院側の持ち出しになるからです」(p.81)

・アメリカ医療制度の最大の問題点は…増加する無保険者の存在だ…無保険者が増え続ける最も大きな理由は、市場原理導入の結果、医療保険が低リスク者用低額保険と病人用高額保険に二分されてしまったことだ…国民は健康な間は会社を通じて安い医療保険に加入できるが、一度病気になり会社で働けなくなった途端、高額な自己加入保険か無保険者になるしか選択肢がなくなってしまう。メディケイドに加入するという最後の選択肢を使うには、貯金をすべて使い果たし「貧困ライン以下」のカテゴリーに入らなければならない。(p.90-92)

・一九七三年に徴兵制を廃止し志願制に切り替えたアメリカで、進行する「経済的な徴兵制」が、目に見えない形で貧しい若者たちを呑み込んでゆく。(p.111)