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Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』を読んで

 

「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)

「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)

 

 大学、高等教育に関心をお持ちの方におすすめの一冊。以下に重要と思われる箇所を引用します。

(1)「文系学部廃止」論を増殖させていったのはマスコミである。

(2)「教員養成系、人文社会系の廃止を視野に入れた組織の転換」という課題は、すでに国立大学法人化に伴う「ミッションの再定義」という流れのなかで数年前から示されており、二〇一五年六月に突然示されたものではない。

(3)法人化後の国立大学の、①資金獲得力、②イノベーション力、③グローバル化対応重視の大学改革の流れのなかで、多くの変革は理系中心の視点から展開され、文系は時代に取り残されているという認識が社会全体にある。

(4)一般社会に、「理系は役に立ち、文系は役に立たない」との通念が蔓延してきた。

(5)文科省もマスコミも政府の諸会議も、誰も未来の「文系」振興に有効な具体的な方向性を示せていない。(p.57)

・目的遂行型の知は、短期的に答えを出すことを求められます。しかし、価値創造的に「役に立つ」ためには、長期的に変化する多元的な価値の尺度を視野に入れる力が必要なのです…文系の学問には長い時間のなかで価値創造的に「役に立つ」ものを生み出す可能性があるのです。(p.74)

・価値の尺度が劇的に変化する現代、前提としていたはずの目的が、一瞬でひっくり返ってしまうことは珍しくありません。そうしたたなかで、いかに新たな価値の軸をつくり出していくことができるか。あるいは新しい価値が生まれてきたとき、どう評価していくのか。それを考えるには、目的遂行型な知だけでは駄目です。価値の軸を多元的に捉える視座を持った知でないといけない。そしてこれが、主として文系の知なのだと思います。なぜならば、新しい価値の軸を生んでいくためには、現存の価値の軸、つまり皆が自明だと思っているものを疑い、反省し、批判を行い、違う価値の軸の可能性を見つける必要があるからです。(p.75)

(1)「役に立つ」には、手段的有用性の次元と価値創造性の次元がある。

(2)「役に立つ」ことは、その目的となる価値の軸の転換を含んだ長期的変化のなかで考える必要がある。この価値の軸は、長い時間のなかで必ず変化する。「文系」の知は、価値の軸の変化を予見したり、先導したりする価値創造的な次元を含み、「長く役立つ」知で、主に理系が得意な「短く役立つ」知とは次元が異なる。

(3)「リベラルアーツ」には言葉の学(文系)と数の学(理系)の両方が含まれ、この文理越境性は近世の「哲学」の概念にも引き継がれていた。

(4)「教養」は国民国家と不可分の関係をなして創造された概念で、なかなか国境を越えられえない。グローバル化のなかで、この概念は根本的な脱構築を迫られている。

(5)戦後、「一般教育」として米国から導入された「自然科学」「社会科学」「人文科学」を横断するカリキュラムは、一九六〇年代には曖昧になり、九〇年代には崩壊した。

(6)今日の人文社会科学の多くは、一九世紀末から二〇世紀にかけて、「国家」と「市場」の中間ないしは外縁の領域を扱うものとして形成された。それらは自然科学に対して自らの存在意義を探り、「価値」の探求を共通の根幹的な問いとしていった。

(7)大学は、人類的な普遍性に奉仕する機関であって、国立大学といえども国に奉仕する機関ではない。(p.109-110)

・…縮小していく日本人の一八歳人口に対して大学が魅力を維持しようとするなら、国際化と優秀な留学生の獲得は最重要ポイントの一つです。(p.124)

・…何よりも必要なのは、日本の大学を、「高校生」と「社会人」の中間にある通過儀礼的な組織から、人生の様々な段階で参加するビジョンやキャリアの転轍機に構造転換させていくことです…人生で三回、大学に入るのが望ましい…一回目が、だいたい一八歳から二一歳くらいまで…二回目が、だいたい三〇歳代前半、三回目が、だいたい六〇歳前後…(p.193-194)