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Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

潮木守一『職業としての大学教授』を読んで

 

職業としての大学教授 (中公叢書)

職業としての大学教授 (中公叢書)

 

 大学教授を目指す方にオススメの一冊。以下に重要と思われる箇所を引用します。

・日本では1960年度から2009年度までに大学教員の規模は15倍に拡大した。これと同じ期間、イギリス、ドイツ、アメリカでの大学教員の拡大が約10倍だったことと比較すると、日本でいかに積極的な大量採用が行なわれたかを知ることができるだろう。(p.32)

・…この現代では煙突型どころか、ピラミッド型を通り越して、見事な逆ピラミッド型となっている。うえに行けば行くほど大きくなっており、教授の比率が40パーセントときわめて高い。この40パーセントという数字はアメリカの25パーセント、ドイツの22パーセント、フランスの22パーセント、イギリスの13パーセントと比較すると、いかに突出して高いかがはっきりする。つまり日本では准教授のほぼ倍近くの教授がいる。教員全体のなかで教授の占める割合は40パーセント、准教授が24パーセント、講師が12パーセント、助教が20パーセント、助手が3パーセントとなっている。イギリス、フランス、ドイツのようなピラミッド型とは対照的である。(p.32-33)

・つまり問題の本質は…大学教員になるためのキャリア・パスをどう設計するかにある。このキャリア・パスの制度設計は、少なくとも四つの条件を考慮する必要がある。第一の条件は、透明で誰にでも分かりやすい制度である。第二にこのキャリアはかならず選抜を伴う以上、すべての者を一律に処遇するといった平等主義はとれない、第三に途中淘汰がある以上、それを保障する何らかのセイフティー・ネットがなければ、こういうキャリアを選択する者がいなくなる、第四に大学外部に開かれたキャリアと対等に競争できない限り、やがて大学は人材を失う、ということである。(p.81-82)

・しかも最近、大学教員になるための競争がひと頃と比べて格段に厳しくなった。教員採用の公募をすると、何十倍もの応募がある。そもそも日本では大学教員の新規採用数はここ十年間ほどは一万人前後で、最近あまり変化していない。問題はこの一万人がどこから採用されているのかという点である…大学教員の場合には、すでに企業、官公庁、研究所などに勤めている人々からの採用もかなりある。大学教員の市場は、大学院修了者だけに独占されているわけではない。(p.122)

・それとともにもう一つの特徴は、官公庁、民間企業、研究所に勤務していた社会人から大学教員になる者がかなりの割合を占めているという事実である。最近では約四割を占めるまでになっている…民間企業、官公庁、研究所を経て大学教員になるケースは、日本だけでなく、他の国でも目立って増えてきている。大学がこうした社会経験を持った人材を積極的に採用するようになったためである…その背後には大学が対象とする学生層が多様化したこと、大学に期待される役割が多様化してきていることがある大学教員の養成の幅を広くする必要性が現在多くの国に認識されており、他の職業経験者を大学教員に誘致する方策がとられるようになっている。(p.123-124)

・日本は大学教育を受けるための費用を大きく家計に負っているが、その傾向は大学院にまで及んでいる。ドイツに限らず欧米では30歳近い我が子に親が経済的支援をすることは、よほどの場合でない限り考えられない。自分でそのための生活費を稼ぎ出すのは当然で、また、ドイツの大学には、それだけの資金が流入している。しばしば日本の高等教育支出のGDP比が、他の先進国の半分にしかならない事実が指摘されてきたが、他国は大学に研究費を投入し、それが研究後継者の育成資金となって還流している。それだけの資金を大学に投じて、知的関心の強い若者を誘致する仕組みが作られている。(p.140)

・日本の場合、企業と大学との間に横たわる溝は深い。それが多くの大学院生を孤立化させる原因となっている。大学院時代をもっと「ハイブリッド化」する工夫が必要であろう。(p.162)

・…日本以外の国は、大学教員へのキャリアが他の職業機会と比較して十分な競争力を維持できているかどうかをたえず測定し、何らかの危険信号が現れると、ただちに警報を発する機関を持っているという事実である。そしてその警告を議会、資金配分機構をはじめさまざまな関係団体に伝達し、具体策を講じるうえで重要な役割を演じているという事実である。(p.165)

・つまり現在われわれの前にある大学は、かつての大学のように、一様な存在ではない。それぞれの大学にはそれなりの理念、目標がある。各大学はそれぞれの理念・目標を実現することで、その存在意義を証明しなければならなくなった。そのためには、それぞれの理念、目標を具体的にどれだけ達成できているかを、逐次評価確認する必要がある。さらにはその評価結果に基づいて次の計画を立てるためには、それまですべての学部・学科を合わせて一括経理をしてきたものを、各学部・学科ごとに分離して収支バランスを計算し、単位ごとの収益性を明らかにすることが必要となる。はたしてその学部・学科がそれぞれの理念・目標を実現しているのかどうか、社会の期待に応えているのかどうか、それをたえずチェックしてゆかねばならない。(p.186)