Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

阿部彩『子どもの貧困II――解決策を考える』を読んで

 

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

 

 子どもの貧困問題を考える際の必読書です。以下に重要と思われる箇所を引用します。

・「子どもを大切にしなければいけない」「貧困の連鎖は食い止めなければならない」。このような理念に反対する者は誰もいない。理念を唱えている段階では、対立は起こらない。対立が起こるのは…どれほど優先的にこの問題に取り組むのかを決定する時である。(p.ii)
・現代の貧困は、複雑で、多面的である…「貧困の連鎖」を断ち切る具体的な支援の道筋が明確ではないのである。(p.iii)
・日本の子どもの貧困率の手がかりとなる確かな行政データは、就労援助費の受給率であろう…近年、この割合が激増している。(p.3)
・就学援助費の受給率は、自治体ごとの所得制限が異なること、所得制限の引下げや引上げがあること、就学援助費を受ける資格があるのに制度を知らないことなどの理由で受けていない人がいること等の理由から、貧困の実態を測る指標としては精確さに欠ける面がある。そこで、より確立された統計的な手法で算出される相対的貧困率OECD…EU…ユニセフ…などの国際機関で用いられており、多くの先進国の公的な貧困基準としても採用されている、最も一般的な貧困指標である。(p.5)
・一つは、一九八五年の時点においてさえ、日本の子どもの貧困率はすでに一〇.九%であったことである…二つめに気づいていただきたいのは、一九八五年から二〇〇九年にかけて、多少の増減はあるものの、子どもの貧困率が右肩上がりに上昇し続けていることである…貧困率の上昇が、単なる景気動向に影響されているものではないことを表している…三つめが、子どもの貧困率の上昇のペースが、社会全体の貧困率の上昇のペースに比べて速いことである…人生の中で、最も貧困リスクが高い時期が子ども期である…(p.7-8)
・…とくに厳しい状況におかれているのが、ひとり親世帯に属する子どもたちである。(p.11)
・…日本の貧困の特徴は「ワーキング・プア」…が多いことであり、その背景には巨大な低賃金の非正規労働層が存在する。(p.13)
・相対的貧困のとりわけ恐ろしいのは、その影響が学力や学歴の格差に留まらない点である…最新の海外の研究によると、相対的貧困が子どもに及ぼすいちばん大きな悪影響は、親や家庭内のストレスがもたらす身体的・心理的影響だという。(p.19)
・子ども期に貧困であることの不利は、子ども期だけに留まらない。(p.20)
・…現代の日本において「機会の平等」は存在しない…医療サービスや基礎的な義務教育の学力さえも享受できていない子どもが存在している…次に私たちが問うべきなのは、この「機会の不平等」を是正するために、どれくらいの費用を社会が負担するべきかという問いである。(p.24-25)
・たしかなことは、私たちには、貧困の要因の完全解明を待つ余裕はないということである…肝心なのは、この「できることをやる」姿勢である。(p.71)
・…一つの判断基準となるのが政策の効率である。それぞれの政策についてモデル事業を実施し、それがどのような効果をもたらすのかを検証する。そして、最も効果があるとされた政策を第一候補とすればよいのである。(p.78)
・政策やプログラムの評価の手法を知ることは、これからの日本における政策を考えるうえで貴重な示唆となる。まず一つが、数ある政策の選択肢の中から実施する政策を選ぶために、長期的な収益性の観点が欠かせないことである…子どもの貧困対策は「投資」なのである…次に、プログラムの実施においては、そのような「投資」の収益性が測定できる制度設計、モデル事業を取り入れるべきである…効果を測る客観的なデータが必要である…最後にプログラムの選択においては、その対象者を吟味しなければいけないことである。(p.96-97)
・子どもの貧困の解消のためには、現金給付は不可欠である…家庭の経済状況は、子どもの状況に決定的に影響するのである…子どもの貧困対策には、金銭とサービスの両輪が必要…筆者の考える現金給付の優先順位は二つである。一つは、貧困率の逆転現象を解消すること…もう一つの優先順位は、乳幼児期の子どもの経済状況を改善すること。(p.231-232)
・子どもの貧困に対する政策は、子どもだけへのサービスでは収まらない。子どもを守るという視点から、親へのサービスを考えなくてはならない。(p.234)