読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

橳島次郎『生命科学の欲望と倫理――科学と社会の関係を問いなおす』を読んで

 

生命科学の欲望と倫理 -科学と社会の関係を問い直す-

生命科学の欲望と倫理 -科学と社会の関係を問い直す-

 

 生命科学系の研究者の方ならびに研究者を目指される方におすすめの一冊。

以下に心に響いた箇所を引用します。

・現代の科学研究は、自然環境や、人も含めた生物に対し、そのありようを変えてしまいかねない力を持つに至った。だから科学する営みにも、一定の制約が課されて然るべきであると考えられている。科学研究に倫理が求められるのは、そのためである…倫理とは、人間の欲望にどう向き合うかであると私は考える…これを私は、科学する欲望と呼んだ。(p.20)
・「倫理とは、よけいな事務仕事ではなく、人文系学者に任せていいことでもない、研究の不可分の一部である」と。(p.23)
・研究倫理とは、研究者の職業倫理である。社会から守れと言われるから従うのではなく、自分たちが満足のいくように仕事をするために、自分たちのために従い守るのが、職業倫理である。違反した場合は、社会からではなく、同業者集団から制裁を受けるのが筋である。だから研究倫理はよけいな事務仕事ではないし、専門外の学者に丸投げできることでもないのである。(p.24)
・職業倫理としての研究倫理のいちばんの基本は、科学的必要性と妥当性に則って研究を進めることである、と私は考える…科学的必要性とは何か。ある事象について知り、なぜそうなるかを解明するために、しなければいけないこと。それが科学的に必要なことである…生命科学の研究倫理としては…生きた動物または人を使わなければできない研究か、ほかの方法ではできないか、という点が、重要なチェックポイントになる…次に、科学的妥当性とは、実際の研究計画が、決められた科学的目標…に達するのに、適したデザインかどうか、ということである。生きものを使って苦労してデータを出しても、知りたかったことを明らかにできないようなデザインでは、研究する意味がなく、科学的妥当性は認められない。そこで厳しく問い、科学的妥当性のある研究だけが行われるようにしなければいけないと求めるのが、研究倫理の要だと私は考える。(p.24-25)
・…人を研究対象にする際に守られるべき倫理原則について考えてみよう…
(1) 科学的必要性と妥当性
(2) 本人同意、無償(経済的誘因の禁止)、匿名(個人情報の保護)
(3) 第三者機関による事前審査(p.29-30)
・現代の生命科学研究は、ほとんどが公的資金によって支えられている。その最も基本的な財源は、税金である…科学者は、研究の真のパトロンである一般国民のほうを向いて、研究の価値を説明し、支持を取り付ける努力をすべきである。(p.46)
・では科学者ではない…者は、社会人として科学にどう向き合うべきだろうか。まず必要なのは、科学研究が何のためになされる営みなのかを、きちんと理解することだろう…そのうえで、そうした付託に社会の資源をどの程度配分すべきか、考える姿勢が求められる。自分たちが出した税金で、国が必要で妥当な予算などの手当をしているかどうか、評価し批判する見識が求められる。(p.47-48)