読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

島岡要『やるべきことが見えてくる研究者の仕事術――プロフェッショナル根性論』を読んで

 

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論

 

 研究者を目指される方におすすめの一冊。以下に重要と思われる箇所を引用します。

・仕事力のつけ方を語るまえに、ぜひとも考えておかなければならないことがあります。それは「仕事とは何であろうか」「仕事は何のためにするのだろうかと」という問いです。(p.14)

・研究者として仕事をすべき10の法則

ステップ1.興味を持てる得意分野を発見する(Discovery and interest)
…「好き」よりも「得意」を戦略的に優先させよう。…
ステップ2.最初は自分で学ぶ(Early self-teaching)
「興味の持てる強い分野」をさらに強化するために、まずは自分で学びましょう…研究するという行為の大きな目的が「謎を解明する」、または「問題を解決する」ことであるので、研究のための学びは「問題の同定」に向かうのが効率がよいはずです…そして、自分で学ぶことの仕上げはその分野のエキスパートに質問することです…セミナーや学会などに積極的に出向き、エキスパートの話を聴き、会場やレセプションなどで質問しましょう。…
ステップ3.師匠を持つ(Formal education)
…正当な教育を受ける際に、真に重要なこととは自分の師匠と出会うということなのです…
ステップ4.現場で恥をかく(Humiliation)
…研究者にとって最もつらいのは、ネガティブな反応ではなく、全く反応がないことなのです…反応がポジティブであれネガティブであれ、人からのフィードバックは成長の糧なのです。恥をかいてでも、ノイズを立て、自分の存在をコミュニティに知らしめる、そして恥など気にせずノイズを起こせるようになることが、プロフェッショナルへの1つの重要なステップなのです…
ステップ5.失敗を恐れつつも、果敢に挑戦する(Serious attempts at professional improvement)
…失敗は最高の学びの機会であり、失敗なしに成功はありえません…恐れるべきは失敗ではなく、失敗を恐れて挑戦できなくなることなのです。失敗が許される環境にあるときには、困難なことに真剣に挑戦し、失敗を経験しましょう…
ステップ6.自分の世界で一番になり成功体験を得る(The beating of local rivals)
人から褒められるとか評価されるという成功体験はプロフェッショナルとしての自己成長を持続的に続けるために欠かすことのできない「燃料」です…個人として人に評価されるためには、まず自分を人の目につくところに置かなくてはなりません。そのためには自分の強みを活かし、自分がトップパフォーマーの1人になれるローカルな環境やコミュニティから始めるほうがよいでしょう…
ステップ7.研究者としての自信をつける(Youthful arrogance)
…この時期にぜひすべきことの1つが、1分で語れる自分のキャリアと研究のサクセスストーリーをつくることです。研究者としての経歴と研究の流れを1つのコンテクストに入れて自分のサクセスストーリーを語りましょう…学歴と職歴だけのプロフィールは印象に残りにくいものです。1分間で語れるクリエイティブな「エレベーターピッチ的」自己紹介をつくりましょう…
ステップ8.井の中の蛙であったことに気付き、打ちのめされる(Reality check and crashing back down to Earth)
…小さな自分の世界でつけた過剰な自信は一旦は打ち砕かれる運命にあるのです…まず相談すべき相手は自分のメンター(指導者や先輩)です。研究の世界で長年業績をあげ、生き残ってきた先輩方はたいていどん底を経験済みです…さらに人に相談することのメリットは、自分の状況を言葉にして表すことで、問題点がはっきりと見えてきて自ずと解決方法や進むべき道が見えてくることも多いということです。また、このステージでは本をたくさん読みましょう…
ステップ9.すべてを知ることはできないことを理解する(Realizing that you'll never come close to knowing everything)
…真のエキスパートとは、自分は何を知らないかをよく知っている、つまり自分の限界を知っている人のことです。そして、自分の知らない分野については、誰が一番よく知っているかを知っている人のことです…本当に必要とされているものは、情報や知識を経験に基づいて意味のある形につなぎ直し、活動の目的に合った形にパッケージし直された「知恵」とよばれるものです。「知恵」はネット上にはなく、人の中にしかありません。エキスパートとは自分の専門領域において「知恵」を提供でき、専門外の領域において他のエキスパートを紹介できるネットワークを持った人のことです。
ステップ10.それでも、自分の新しい見識を常に世に問うていく(謙虚ではあるが臆病ではない)
…常に自分の限界の拡大をめざし、未熟である部分は認めつつも、自分の新しい見識を世間(コミュニティ)にさらす。そして、コミュニティからの評価を受けていくことをいつまでも続ける過程がプロフェッショナル/エキスパートへの成長のゴールなのです。自分の見識を披露する方法は論文を出版することや、学会やセミナーで発表することがメインですが…ブログという個人メディアを通しての発信の方法もぜひ取り入れたいものです。(p.15-26)

・40年余り前にすでにドラッカーは、研究者のような知識労働者は自分の強みを生かすことでしか、仕事力を発揮することができないとして、「長所の強化」の重要性を提唱しています。(p.29)

・…自分の「強み」がわからない人は、ボスやメンターに相談することを考えましょう…私が用いて非常に有効であったのは、メンターや同僚に推薦状を書いてもらった際に開示をお願いして、そこに書かれた自分の評価を通して「強み」を知るという方法です…ポジティブな推薦状では、被推薦者の「強み」を強調してプレゼンテーションするものなので、自分の「強み」とその強化の方法を知る非常に有力なヒントになりました。(p.35-36)

・研究者というプロフェッショナルな仕事の魅力の1つは時間的な自由度の大きさですが、同時に時間管理の上手い下手が研究者のプロダクティビティーを決定する大きな因子となり、ひいてはキャリア形成に大きな影響を及ぼします。(p.44)

・80/20%ルールにしたがって、To doリストの実行順位を決定するならば、時間・エネルギー・リソースが有限である以上、たとえ困難でも最も重要な仕事に最初にとりかかるべきです。(p.51)

・目標を紙に書くという行為は、その目標の達成の可能性を上げる効果があるのではないでしょうか…さらに大事なことは、期限を決めることです。(p.55)

・研究者にとって自分の研究は「商品」です…ではどうしたら「商品」はうまく売れるのでしょうか…商品が売れるためには、マーケットで1番になることが最良のマーケティング戦略という、一見逆説的な難題を実行可能に落とし込む戦略がマイクロ(ニッチ)マーケティング戦略です。(p.61)

・…必ずしも本当に「全世界」を相手にする必要はないのです。商品が売れるためにまず必要なのは「自分の世界」でトップになることです…まずはこのような「自分の世界=ニッチ」でトップになり、そのニッチで確立したブランドイメージやビジネスのノウハウ・成功体験をもとに、さらに大きな世界に展開していくことも可能というのがマイクロマーケティングのポイントです。(p.63)

・研究者が「自分の世界」を設定する際には、Dipのあるプロジェクトやキャリアパスを戦略的に選び、それを乗り越えることで希少で交換不可能な「自分」を作るということが、自分のニッチでローカルな第一歩を踏み出すための心得であると考えます。(p.67)

・研究者が特に注意すべきことは、目の前の小さなリスクを取る少数派になることを恐れ、一見安全に見える現状維持を選ぶ多数派に属することです。オリジナリティーが命の研究者にとって「みんなと同じ」であることはすでにリスクである可能性は高いのです。そして、さらにグローバル化した世界には、ハングリーで失うものなどなく目の前の「小さなリスク」をとることをいとわない競争相手が多数いる可能性を常に念頭に置かなくてはならないのです。(p.88-89)

・研究者は自分の研究成果は自分で販売しなくてはならないし、販売できるという能力が今後ますます評価されることでしょう。そのために研究者がマーケティングの手法から学ぶべきコミュニケーションスキルが「物語力」なのです。(p.100)

・研究者は自分の研究を同僚・研究者コミュニティー、世間の人に正当に理解してもらってこそ、昇進や研究費獲得などの自己表現や、ネットワーキング、コラボレーションを通した社会貢献の可能性を広げることができます。自分の研究を知ってもらい、よく理解してもらう機会は学会発表や研究室内外でのトークやセミナー、ポスターセッション、懇親会などでのネットワーキングや、さらにはメール/ブログ/ホームページでの自己プロフィールなどを通してのセルフプロモーションなど多岐にわたります。これらの機会で自分の研究を商品としてうまく売るためには…研究者もよい研究を行い…その専門的なデータを示す…だけでは十分ではなく、人の心に響く…ストーリーを語らなければなりません。ストーリーを語ることが自分の研究の価値を他人によく理解してもらうための最も強力な方法…と考えられるのです。…聞く者の印象に残り語り継がれていくために次の3つのポイントが特に重要です。
1.生き生きと語る(Story must be told Lively)
いきなり発見・発明の結果を話しただけでは相手に現場の臨場感はなかなか伝わりません。発見・発明につながるプロセスを話し、聴衆と共有することによって、発見や達成の現場の臨場感と素晴らしい結果を得た興奮をわかってもらえるのです。…さらに、どんな動機でこの研究を始めたのか、研究の過程でどんな困難に直面したのかなど、裏話を恥ずかしがらずに話し、ヒューマン・ストーリーの味付けをしましょう。…
2.信憑性/正統性をもって語る(Story must be Authentic)
…ストーリーに信憑性があるとか、正統性があると認識されると、人から人へと語り継がれる可能性が上昇します。…信憑性/正統性は外部から与えられる面も大きく、ピアレビュー付きの一流の雑誌に掲載されるとか、その分野のエキスパートから賞賛される等はストーリーに信憑性/正統性を与えるよい方法です。
3.意味づけを語る(Story must be placed in Context)
ストーリーは相手の心の琴線に触れないと語り継がれません。聞く人に…納得してもらうことが大切…以上の3つのポイントを活かした演習として
①この3点に注意して5~10分(パワーポイント10枚)程度のコアーとなるパワーポイントプレゼンテーションを作りましょう。
②さらにポリッシュアップを重ね、枝葉をそぎ落とした本当に重要なストーリーを1センテンスに集約し「エレベーターピッチ(1分以内、スライドなし、懇親会などでのネットワーキングやウェブでのプロフィール用)」を用意しましょう。
③または逆にイントロとデータ部分を拡張充実させてジョブトーク(30~40分、スライド20枚、セミナー/学会用)に発展させましょう。そして同僚や先輩/上司に見てもらいコメントをもらいましょう…。(p.102-104)

・たとえ聴衆にメッセージを確信してもらうというプレゼンテーションの目的を理解していても、ついつい陥りやすい5つの技術的なピットフォール(落とし穴)があります。
1.何が重要なポイントかわからない(No clear point)
…はっきりと(explicitly)文字にし、かつ言葉にして伝えなければなりません…
2.聴くだけ時間の無駄(No audience benefit)
…聴衆のレベルにプレゼンテーションのレベルがマッチしていないことが原因の1つと考えられます…
3.話の流れがない(No clear flow)
…プレゼンテーションでは論文以上に物語性が要求されます①生き生きと語る;②信憑性を持って語る;③意味付けを語る、を心がけてください。
4.細かいことにこだわり過ぎる(Too detailed)
スライドにすべてを詰め込む必要はありません。いや詰め込んではならないのです。聴衆はスライドを読みにきたのではなく、あなたのプレゼンテーションを観に(聴きに)来ているのです。…スライドはできるだけシンプルに。…
5.長過ぎる(Too long)
制限時間は絶対に厳守…トータルの時間の20%程度は質疑応答・ディスカッションのために残すべきです。(p.113-115)

・プレゼンテーションの準備で最も重要なことが十分にリハーサルをすることです…最低3回は通しで演台に立ち声を出して本番さながらにリハーサルする時間を予定に組み込んでください…3回のリハーサルの目的はそれぞれ、
1回目:言葉を口にすれば、それは聴衆だけでなく自分にも作用する。まず自分の発した言葉に対する感情の揺れを経験できるように。
2回目:感情に押し切られないように勢いをつけられるように。
3回目:平常心で言葉を発することができるように。(p.117)

・うまく質問するために覚えておくとよい10のポイント

①マイクを使う:…
②会場のざわめきがおさまるまで一時のポーズを:…
③言い訳をしない:…
④演者をファースト・ネームで呼ばない…
⑤しゃべりすぎない
⑥短く簡潔に:…
⑦2つ以上質問をしない:…
⑧もし適切ならば、単なる質問だけでなく少しだけ何か自分のことをいおう:…
⑨(シャウトではなく)声を張る:…
⑩質問することであなたが成長するということをお忘れなく。(p.119)

・もちろん学会発表や論文発表は仕事上では最高のアウトプットです。しかし、広い意味での自己啓発や将来への自己投資という意味での「知恵」をつけるためには、直接仕事にかかわること以外のインプット(読書、日常の経験、旅行、ニュース、日々の気付きなど)についてもアウトプットをしていく必要があります。(p.140)

・研究者の間でも誰かに初めて会う前には、ラボホームページでの経歴やPubMedで業績を前もって調べるのは、「ごくごく自然の振る舞い」であり、今後、研究者の世界でもラボホームページとPubMedでの情報に加え、ビジネスの世界と同様にブログでのネット上の情報が個人のプロファイルに反映されていく可能性が高いのです。また、ラボホームページとPubMedでの情報に比べて、ブログは個人の努力で比較的短期間に充実させて、ネット上でのプレゼンスを高めることが可能であるので、エネルギーをつぎ込む価値があります。/日本でもアカデミアでの任期制の導入や、企業の再編成が相次ぎ双方で人材の流動性が…上昇していく環境では、大きな組織に一時的に属していても、常にフリーランスのように個人として振る舞う準備をしておく必要があります。(p.141-142)