Mike's Blog

これまで読んできた本を引用を含めて紹介します。 Introducing books I have read including citation http://www.arsvi.com/w/km18.htm

苅谷剛彦『オックスフォードからの警鐘――グローバル化時代の大学論』を読んで

 

 高等教育に関心をお持ちの方におすすめの一冊。以下に心に響いた箇所を引用します。

・世界の共通語として、英語を使えることは前提条件の一つですがそれに加えて、あくまでも高度な教育を受け、最新の専門性を持った人材であることが求められている…(p.13

・…イギリスでもアメリカでも、大学のほうが近代国家よりも先に成立している…国家が先にあり、西洋へのキャッチアップ、近代国家体制の整備という目的を達成するための機関として、日本の大学は誕生した…(p.18-19

・…国際的に優秀な学生が大学を選ぶ基準の一つが、大学ランキング…(p.21

・…大学の一つの専攻に過ぎないはずのものが、国家戦略そのものとも密接に関わっている…(p.22

・欧米の大学にできないことをやる…日本という国は世界でもかなり特異な経験を積み重ねてきた国…少子高齢化、長期にわたる経済の低成長、原子力を含めたエネルギーやエコロジーの問題など、人類が共有すべき課題を一足先に経験している…日本の近代150年の歩み自体が、世界にとっても重要な研究対象になりうる…(p.24-25

・…国際的な競争を前提とした課題解決優先型の人文社会系の大学院を、多くても三つ程度、じっくり時間をかけて設立する…3種類の人材が必要…海外のトップクラスの研究者…彼らの研究拠点が日本にあることに意味がある…日本語も英語も理解できる媒介役の研究者…日本の課題、日本から得られる知見を世界に発信していく役割が期待されます…各分野でトップクラスの研究を行っている日本人研究者…さらに重要なのは、このような研究機関を設立した後、しばらくは…卒業生を積極的に採用するなど、キャリアとして高い評価を与えること…(p.26-27

・日本人が学んできたことの中には、世界に向けて知識として活用できるものがたくさんある…日本にしかできない付加価値の教育と研究を表に出していく方が、身の丈に合っている。その限りでなら英語で教えることにも意味がある。(p.39-40

・…日本の大学教育の特徴は、学生が週あたり10コマ以上もの異なる授業を履修し、しかもそれらの授業にはリーディングの課題もライティングの課題もほとんどないところにある…優れた教育とは、学生に学習の負担を課し(たくさん読み・書き)、それらをもとに議論し、学生の批判的思考力を高めることを旨としている…(p.68-69

・…現在の予算の制約下では優秀な海外の教員をリクルートすることもままならない。(p.72

・…人文社会系の学問の多くは、その学問が発達した国や地域の特性――歴史や分野(言語を含む)、地政学的特徴など――を反映させることで価値を生む。(p.92

・日本自体についてはもちろんのこと、日本以外の国や地域の研究にしても、このように差異化しうる視点を有効に示せれば、欧米の大学とは異なる特徴を持った人文社会系の学問は世界に通用するはずだ。(p.95

・…ともかく英語で発信しようという、質より量の姿勢がまさっている。日本語から英語に言葉を換えたところで、それだけでは海外の読者を引きつける日本の強みを発揮したことにはならない。日本初の研究であることの強み…をアピールするような視点と論理構成を取らない限り…関心を持たれない…アピール力のある強みを引き出すプロデュース力が日本の文系学問に求められている…それを熟知したアドバイザーやエディターも必要…(p.97

・日本発の研究の強みを発揮するためには、研究の厚みが重要…(p.98

・閉じた仕組みの中にいるとそこで行われていることが当たり前となる。だから、それを超える視点と知識を与えるグローバルな教育が求められる。(p.167

・…グローバル化は「あまりにも曖昧な概念」…でもあるにもかかわらず…さまざまな影響を及ぼしている…「グローバル化」という概念には、実態としての社会変動自体を指し示す面と、それらに関する「イデオロギー」…を意味する面の二つがある…(p.171

・…グローバル化とは、2000年以降の流出留学生数の急速な増大、とりわけ中国からの留学生の増加と、それらによって拡張したグローバルな高等教育市場のシェア獲得競争の中で英語圏の大学、とくにイギリスの大学が国策として留学生の受け入れ拡大を積極的に進めたこと、その一環としてイギリスの主要メディアを中心に世界大学ランキングがつくられ普及し、マーケティング戦略の一端を担ったことに象徴される現象…グローバル化に日本がまんまと巻き込まれるようになったのには、日本側の特性が絡んでいた…追いつき型近代化とそこからの脱却として問題構築の枠組みがつくられたこと…日本の後進性という意識を根づかせ、その遅れを欠如とみなす見方…内部に参照点を持たない、それゆえに具体性を持ちにくい目標設定であり続けた。(p.221-222